『してやれること』



「入るぞ、三成」
「まったく、何故俺が‥」
文句を言いながら、頭を掻き机に向かう三成の背中を見て吉継は笑った。
「どうした?煮詰まったか?」
「ん?‥よ、吉継!?」
三成はびっくりして、吉継に向き直った。
「はは‥そんなに驚くこともないだろ?大丈夫か?」
「‥むぅ、お前は気配がないから嫌いだ」
しかめっ面をした三成に吉継は笑顔を変えることなく、
横に腰を下ろした。
「次の戦か?」
「あぁ」
「お前はいつも忙しいな」
「それでも結構減った方だ。最近は左近が半分助けてくれる」
「そうか」
吉継は少しだけ疲れ気味な友の横顔を見た。
「‥疲れているようだな?」
その言葉に三成が真っ赤になる。
「ば、馬鹿な事を言うなッ!!俺は平気だッ」
「そうか?少しだけやつれた気がする」
「気のせいだッ」
「それに‥」
吉継の手が三成の前髪を掻き上げる。
「寝てないようだ」
「ッ」
三成が図星で益々赤くなって、俯いた。
「心配は無用だッ!吉継には吉継の仕事があるだろ!
帰って、仕事をしたらどうだ」
「俺の仕事なんざたかが知れている。
お前に比べれば、月とスッポンという奴だな」
「だからって、こんな所で油を売るなッ。
だいたい‥俺の仕事の邪魔なのだ」
三成の怒るような言葉も吉継は気にしない。
「邪魔でもかまわない。三成、少し休んだらどうだ?」
「だから、俺は仕事がッ」
「そんなのは後でもかまわない。秀吉様には俺から言うさ」
「馬鹿を言うなッ!!間に合わなければ、明後日の戦がどうなるかっ」
「じゃあ、左近に押しつけるか」
「お、おい!」
「そういえば‥こないだ左近はお前と手合わせすると称して、
ベタベタしていたような気がするが?」
三成の頬に朱が走る。 「よ、吉継ッ!!」
「‥良いだろう?たまには俺にも付き合え。
左近ばかり見られていては叶わない。俺の方が付き合いは長いのだ。
‥分かっているのだろ?
左近だってお前が心配で手合わせなどと言ったのだ。
俺にもやらせてくれ」
「‥‥」
「俺は左近みたいに仕事を手伝うほど頭が良くない。
かといって、お前を守れるほど側にもいられない。
なら何が出来るか。唯一出来るのはお前の休息を作ってやることだけ」
嘘だと三成はボソッと呟く。
「‥随分強引な休息だ」
三成の顔が少し笑う。
「はは‥、まぁな。
三成が嫌がろうが、何しようが俺は休ませると決めたら 休ませるぞ?
だから、休め」
吉継に晴れやかに言われ、思わず三成も笑った。
「お前には勝てないな、紀之助」
幼名で呼ばれ、吉継の目が優しくなる。
「勝てなくて良い。じゃなければ、俺はお前の友をやっていられないぞ」
「失礼な‥」
三成は苦々しげにそういうと吉継の膝に寝ころんだ。
「良いか?一刻もしたら起こせ」
「‥分かった」
「起こし忘れた時は、後が酷いぞ」
「勝てる見込みでも?」
「‥フン、言っていろ」
三成はそう言うと瞳を閉じた。
「ゆっくり休め、佐吉。お前の休息は俺が守ってやる」
三成の髪を優しく撫でながら、
吉継は温かな日差しが差し込んでくるのを見つめていた。



*前のHPから持ってきました。
 吉継は強いという野村氏の「仁将」を読んで思いついた物です。
 まぁ‥それ以前に戦国CPで、
 膝枕ネタはやってないな〜‥って思ったせいもありますが(え)
 三成受けは昔っから吉継×三成が大好物ですv
 無双の三成さんを見て、余計好きになった今日この頃。
 しょうもない後日談があります。

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