『アイスの利点』

「何がいいんだよ、んな甘いもの」

馬鹿にするように笑い、アカイトはカイトに尋ねる。

「え?美味しいよ、アイス」

ほらっと見せるのを手を振って断る。

「馬鹿らしい。 んな甘ったるいもんばっか食ってるから、
てめぇの脳内万年春なんじゃねぇの?」
「そうかな?」
「そうそう。断然っ!こっちの方がいいって」

アカイトはニッと笑うと唐辛子を見せる。

「それは辛いからなぁ‥。ミクも嫌いだし」
「なんでそこで嬢ちゃんが出て来るんだよ。関係ねぇだろ」
「んー、まぁそうなんだけどさ。けど、これは好きだから」

カイトはにこっと微笑んで、持っていたチューペットを二つに割る。

「こうやって分けて、半分あげるとミクが喜ぶんだ。
ちなみにこの緑色のがりんご味で、
こっちの黄色のがパインで、紫のがぶどうなんだ」

面白いよねとカイトが同意を求める。

「あっそ」

それに、

「惚気なんか聞きたくねぇよ」

と視線を逸らすアカイト。
瞬間、カイトが呟くように

「ハク姉さんも好きだよね、これ」

と一言。

「!?」
「やっぱり、ミクの亜種だからかな?」

口に含んで、カイトはチューペットを味わっている。

「ま、ま、ま、マジか?」

ガバッとアカイトがカイトを掴む。

「え?あぁ、うん、まぁね。こないだあげたら喜んでいたから」
「よ、喜んでいた?」
「メイコ姉さんが言っていたけど、女の子って甘いものが好きなんだって。
リンも、ミクも好きだもんね」
「お、俺にっ」
「?」
「それ、一本くれ!!」

***

「は、ハク‥」
「?」

声をかけられ、俯いていたハクの顔が上がる。

「あ、あのよぉ」
「なんですか?」

キョトンッとしている。
アカイトは唾を飲み込むと持っていたチューペットを差し出した。

「こ、これ、やる!」
「え?」

いきなりのことにハクは驚いている。
アカイトは顔を真っ赤にして、動きが止まっている。

「いいん‥ですか、私なんかに」

オドオドと尋ねられ、コクコクと頷く。

「ありがとう」

受け取りながら、ふわっとハクが微笑む。

「っ!?」

ボッと先ほどよりもアカイトの顔が赤くなる。

「き、き、気にするなよ!!ど、どうせ、貰い物だしよ」

ギクシャクしながら、アカイトは後ずさる。

「礼なんかいらねぇからな!そ、それは俺の気持ちだっ」

そう叫ぶと、アカイトは一目散に逃げ出した。
残されたハクはぽかんっとして、小さく笑う。

「‥アイス」

開けると口に含む。

「美味しい‥」

ハクが嬉しそうに微笑んだ。

*うちのアカイトはハク姉さんが大好きです。
 普段クールにしているのに ハクのことになると必死になりすぎて、
 逆にお馬鹿な感じになってしまう可愛いやつです(苦笑)
 大したものじゃないですが、後日談あります。

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