*「はちなな屋」の佐倉様の二万打&お誕生日のお祝いに差し上げたものです。
恐れ多くも、佐倉様宅の素敵な重次さんと数正さんで書かせて頂きましたv
そのため、佐倉様宅の設定で書かせて頂いております。
佐倉様宅のアダルティなお二人が大好きです!
本当に、書かせてくださりありがとうございます(平伏)
少し、R15くらいなので苦手でしたら避けてくださいませ。
「随分ともてるんだな、”伯耆殿”」
にやりと笑って、後ろから近寄ってきた重次に数正は眉を寄せた。
「‥なにか用ですか、作左”殿”?」
人もいないのにわざわざ「伯耆殿」呼びをした相手を不愉快に思い、
数正も嫌みったらしく”殿”をつけて名前を口にする。
「いや、さすがは伯耆殿だなと思っただけだ。女中に人気がある」
その言葉に、一層数正は眉を寄せる。
つい先ほど、女中が困っているのを助け、
礼を言われていたところだ。
それを知っているとは‥。
「盗み聞き、盗み見なんて‥最低ですよ。
いるのだったら、声をかけたらどうです?
こそこそと‥貴方らしくもない」
「そんなつもりはなかったんだがな。
‥なに、儂はこの通り見た目が怖いだろ?
女中を逃がしては、モテモテのお前に悪いと思ってな」
「それはなんです?嫌味ですか?」
肩に触れてくる手を払って、睨むが重次は相変わらず笑っている。
「いや、そんなつもりはない。素直にもてて、羨ましいという意味だ」
「そうですか。‥別段、もてても嬉しくないですけど」
だいたい、もてる云々を口にされると
己が女顔だと言われている様で腹立たしいのだと数正は心の中で思う。
だから、腹いせに
「だいたい、貴方だって家中では尊敬の的じゃないですか。
‥大変おもてになるようで、羨ましい」
と嫌味を口にしたが、重次は少しだけ驚いた顔をした後、
にやっと笑ってから
「それはなんだ?‥妬いているのか?
心配せずとも、儂が特別優しいのはお前だけだ」
と、数正の耳元に唇を寄せて、返してきた。
そんなつもりなど、少しもないのに
耳元で低く口にされて
カァァッと数正の頬が朱に染まる。
「違いますよ‥、勘違いも甚だしいッ」
そう口にして、傍にある顔を押しのけようとするが
逆に手をとられて、逃げることも出来なくなる。
どころか、気がつけば壁に押し付けられ
益々逃げられなくなる。
「やめて下さいっ!」
慌てて、抵抗するが
「何故だ?」
と、わざとらしく尋ねられる。
力では、明らかに重次の方が強い。
それをいい事に、重次は数正の首辺りに顔を埋めて
首筋に舌を這わせた。
その這い上がってくる感触にゾクッと身体が粟立つ。
それに声が出そうになって、慌てて唇を閉じる。
だが、
「っ‥ふ」
きゅっと閉じたはずの唇から、
吐息が耐え切れないで零れてしまう。
駄目だと必死に声を殺す。
だが、そちらにばかり気をとられていると、
不意に重次の手が数正の下半身へと触れてきた。
それに気がついて、思わず声を上げる。
「やめて下さい、作左ッ!!
人が、‥ここでは人が通るっ!離して下さいっ」
誰かに、‥誰かに見られたら。
ましてや、それが家康だったらと思えば数正も動揺を隠せず
勝てないとは分かっていて、再度抵抗する。
だが、重次は少しも止める気配がない。
どころか、
「嫌だと言ったら、どうする、伯耆殿?」
そう楽しそうに尋ねてくるのだ。
やめない重次に、数正は苛立ったが
それ以上に先ほどから引っかかることがある。
‥さっきから、不愉快で仕方ないことが。
「‥作左っ」
「なんだ?」
「何故今日に限って、ずっと”伯耆殿”呼びをするのですかっ」
普段、重次が数正と二人でいるときは決まって”数正”と呼んでくれる。
だが、今日は人がいないというのに先ほどから”伯耆殿”呼びだ。
これは、嫌味か?
「作左こそ、女中に囲まれているのを見て妬いたんですか?」
それ故の、嫌味?
問うた事に、重次は
「さぁ」
と曖昧に答えるだけ。
「それは、伯耆殿の推測に任せる」
「‥っ、あ」
いつの間にか、乱された着物の隙間から
重次の手が数正の太股に触れてくる。
数正は、もう噛み締めるだけじゃ堪えきれない、
甘く溶けてしまった声を手で塞ぐ。
相変わらず、笑っている重次を「酷い」と睨むが
ちっとも効果がない。
どころか、口を塞いでいる手の甲を唇で触れたり、舌で舐めてくるのだ。
一体‥何を?と数正は、思ったが
すぐにこれが己の唇への口付けなのだと気がつく。
要は、唇を隠しているのだから
口付けもここで良いだろ?という重次なりの意地悪なのだ。
‥子供じみているっ‥と思わず舌打ちしたい気分になりはするが、
重次が愛おしげに触れてくるたび、耐えがたくなってくる。
角度を変えて、触れてくる唇。
指と指の間をなぞるような舌。
「‥直接したくないか?唇同士で」
挑発的に重次がそう口にした瞬間、
数正は自ら手を外すと己から相手に口付けていた。
手にされたのに応えるように、
角度を変えて口付けて、舌を絡める。
重次が、意地悪く喉の奥で笑った気がしたが
数正は無視することにした。
負けたと認めるのが嫌だったからだ。
すると、不意に太股に触れていた手が数正の弱い部分へと触れてきて
口付けていた唇が離れて、甘く蕩け切ってしまった声が溢れた。
「やっぱ、お前の乱れた声が聞けねぇとつまらねぇな」
その言葉に、数正はハッとする。
自分がまんまと重次の罠にかかったことに気がついたが、もう遅い。
あっという間に彼のペースだ。
こんな風に重次に好きにされてしまう自分を少し悔しく思いながらも、
「ここで抱くつもりなら、ちゃんと名前を呼んでください」
逃げられないのだから一番むしゃくしゃすることを解消したいと
本音を口にする。
重次は一瞬、素直に口にした数正を驚いた風に見つめたが
小さく笑った。
「良いのか、人が来たときに”伯耆殿”じゃなくて?
儂とこういう関係だって、ばれるぞ?」
「‥そんなの今更じゃないですか」
だってもう、ここでこんなことをしていては、
ばれるも、ばれないもない。
「作左、名前を呼んで」
首に腕を回して、引き寄せて頬に口付ける。
すると、応えるように額に口付けられ
「数正」
と少し優しくなった声が名前を呼んでくれる。
不覚にも、そんな声音と触れてくる唇の温かさに鼓動が早くなる。
数正は、それがなんだか気恥ずかしくて顔を背けようとしたが
フッと重次に優しい顔をされて、目を離せなくなった。
いつもは、しかめ面か、変態のくせに‥こういう時だけズルイのだ。
思わず無意識に、唇が紡ぐ。
「今日は‥、今日はこのままして下さい」
もう少し、名前を呼んだり、触れてくれる唇を見つめていたい。
優しい表情をこのまま、見ていたい。
くしゃっと前髪をかき上げるように触れると、
重次がにやりと笑い
「珍しいな?後ろからじゃなくて良いのか?
まぁ、‥儂としてもお前の蕩け切った、
淫らな表情が見られるから構わねぇが」
などと、雰囲気を台無しにすることを口にしたので
数正はその頬を軽く抓った。
「変態」
「‥だが、そんな儂が好きなんだろ?」
「知りません」
そっぽを向くと、不意に耳に軽く口付けられる。
苛立って、邪険に返そうとしたが、
「数正、‥怒るな」
そんな風に、愛おしむような表情で柔らかく言われ
数正は言葉に詰まった。
どころか、不覚にも身体が熱を持っていく。
いつも自分ばかり‥と流されてしまうことを悔やむ数正の耳に
「そういう表情が見られるのは、‥果たして儂だけか?」
重次のトーンが落ちた声が入ってくる。
たぶん、ほとんど無意識に呟いたのだろう。
だが、それが、先ほど曖昧だった答えの
本当の答えだと数正は気がついた。
――なんだ作左は、妬いていたんじゃないですか
自分をあーだ、こーだ言って翻弄するくせに、
実は重次が本心はモヤモヤしていたことに数正は思わず笑った。
自分も素直じゃないが、重次もあまり変わらない。
数正の珍しい笑みに、重次が僅かに驚きの表情を浮かべる。
「どうした?」と問う声に
今までの、腹いせも、愛おしさも‥何もかもを込めて
「貴方だけです」
とだけ呟いて、先を促すように誘った。
終