身に負った病より、ずっと重い病。
――すでにそれは重症。
「顔には出さないでいられたがな。‥それもここまでか」
そう呟いた吉継に三成が図面から目を離し
「何がだ?」
と尋ねる。
「ん?あぁ、聞こえてたか?」
「あぁ。‥何を顔に出さないんだ?」
怪訝な顔で見つめてくる親友に吉継は笑うと
「‥病が深刻になったのさ」
そう冗談っぽく言う。
「なっ」
その言葉に三成は驚くと、
図面をバンッと置き吉継に顔を近づける。
「酷くなっているのかっ!何故俺に言わなかったっ」
真っ青になり、怒鳴る三成に吉継は落ち着いた口調で
「佐吉、心配しすぎだ。少し落ち着け」
と宥める。
「これが落ち着いていられるかっ!何故お前はいつも俺に言わないっ」
「そんなに俺は秘密主義だったか?」
「俺に言わないで勝手に決めて、勝手に実行するだろっ」
「そういわれれば、そうかもしれないな」
「紀之介ッ!!」
三成は吉継の襟を掴むと揺さぶるように
「俺に隠すなッ!病のことなどとうに知っているし、
今更何を遠慮することがあると言う?
俺とお前の仲だろ」
と怒鳴る。
「そうだな‥」
吉継は困ったように小さく呟き、瞳を閉じる。
今も三成の言葉に胸を蝕む病。
確実に広がるそれを、食い止める術はないし、もう遅い。
「‥別に、この身の病が重くなったわけじゃない」
ゆっくりと包帯に隠れていない方の瞳を開き言えば、
安堵したのか三成の手が襟を離れる。
「お、‥驚かすな‥紀之介」
俺はお前が‥とそこまで言って、項垂れる。
「悪かった。‥心配することはない。
酷くなれば、隠さずに話すよ」
吉継は三成の髪を撫でて、言って聞かせると
「本当だな?‥俺に隠さないでくれ」
そう抱きつかれる。
「あぁ、隠さない」
隠していたのは、もっと奥に潜む、この病だけ。
「‥俺がお前に隠すことなどないよ」
どうせ、隠そうが隠すまいがこの病は既に重症。
――発病するのも時間の問題。
「佐吉、‥」
吉継の低く囁いた言葉に
三成がだんだんと驚愕の表情へ変わっていく。
言葉は次の口付けに塞がれて、出てはこない。
「もう、この病を抑える薬も、術も俺には分からない」
――それはゆっくりと身のうちから外へと侵して行く病。
「隠さずに話したが、‥これでも佐吉は俺を嫌わないでいてくれるか?」
それだけが心配なのさと吉継は笑う。
――この身を侵す最も重い病は、親友への『恋慕』
終
*久しぶりに無双創作吉継×三成です。
采配の吉継さんが「優しい」であらわせるなら、
うちの吉継は「酷い」以外の何者でもないです。
見た目も黒きゃ、中身も黒い男なのでそういう雰囲気で書いてみました。
いやっ!吉継さんは三成さんに対して意地悪ならいいよっ!
ギリギリまで理性で抑えて、爆発する頃に「お前は?」と答えだけ迫って
本当のところ聞いちゃいない感じぐらいに!
問答無用だったり、答えが違うとしても覆せるような吉継さんが理想です(え)
何はともあれ、殿が可愛すぎるのがいけないと私は思うのですが。