”手を伸ばせば、貴方に届く距離‥”
それはなんだかもどかしいけど、素敵な距離。
背を向けて座っていても、隣り合って立っていたり、向かい合って談話したり。
なんてことない距離だけど、
それが堪らなく嬉しいのはきっとその人が好きだから。
目が合えば、微笑んでくれるし、
名前を呼べば”どうした?”って優しく聞いてくれる。
フッと瞳に優しい色が入って、柔らかな表情になるのが好き。
光に淡く反射する髪のせいか光の元で淡い存在の貴方。
手を伸ばして掴むと消えそうで怖いなんて言えないけど、
まるで水に映った月みたいにゆらゆらなくなってしまいそう。
今日もまたその人は俺の前で本に目を通して、座っている。
瞳はジッと書物に注がれて、微動だにしない。
邪魔しちゃいけないって分かってる。
けど、なんだかうずうずしてくるんだ。
喉まで”紀之介〜ッ!!”って出かかってる。
呼んだら、きっとまた優しい顔をして聞いてくれるんだ。
そう思うから、呼びたくなる。
これって特別な事だと思うんだ。
紀之介がいて、俺がいて。
必要だって思えば、答えてくれる人がいる。
なんて、嬉しいことだろう。
紀之介はそう思ってくれているだろうか?
この距離で不安になった事はない。
だって、何かすれば彼は見てくれるって保証があるから。
それってやっぱり紀之介も特別だって思ってくれているの?
ジッと見ていると少しだけ紀之介の視線が自分のと絡まった。
「どうしたんだ?」
「え?」
「俺の顔を見て、何かついてるか?」
咄嗟に頭を振る。
その瞬間いつもみたいに紀之介が笑った。
書物から目を離して、優しく、柔らかく笑ってくれる。
「佐吉、暇なのか?」
そうやってかまってくれる。
別に寂しくなんかないんだ。
「紀之介がいるから、つまらなくないよ」
紀之介の瞳が大きくなる。
へへ‥、言っちゃったv
「そうか。‥それは良かったよ」
紀之介が落ち着いた声でそう言って微笑む。
「俺も佐吉といると楽しいよ」
今度は俺がびっくりする番だった。
「本当に?」
「本当さ」
紀之介が距離を縮めるように側に寄ってくれる。
それは手を伸ばせば届く距離じゃない。
それは、もう届く距離。
「佐吉がいるって思うと嬉しい」
紀之介の大きくて、温かい手が俺の手を握った。
「触れちゃった、‥紀之介に」
「何がだ?」
「ん?え‥、なんでもないよ。こっちの話」
なんて、幸せなんだろう。
なんて嬉しいんだろう。
側に紀之介がいて良かった。
紀之介に出逢えて良かった。
大好きだよ、紀之介。
「佐吉、好きだ」
温かな日溜まりの中で俺は夢へ誘われる。
そんな耳元でそうやって囁かれた気がした。
紀之介も同じ気持ち?
良かった。
良かったな‥。
同じなんだ、紀之介も。
そんな事思って、いつの間にか寝ていた。
”あともう少しで手を伸ばせば、貴方に届く距離で、
伸ばさなくても、届く距離で”
貴方との夢をみながら
終
*創作Ver吉継×三成です。
妹のお題”手を伸ばせば届く距離で”から想像しました。
こっちは三成が吉継のことが、大好きです。
吉継だって負けずに好きだけど、大人なので弟甘やかすみたいな扱い方です。
清正と正則を書いた辺りからずっとこっちも創作で書いてみたかったので、
書けてよかったです。
無双がどっちかというと大人な感じに書いているので、
こっちは出来るだけほのぼのした感じで書こうと思ってます。
またネタがあれば‥ですけど。
それにしても、‥思いっきりスランプな感じですみません(汗)
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