『覚えている』

「見えなくて、辛かろう‥」

三成の手が、視力を失った吉継の瞳に伸びる。
ゆるゆると瞳を閉じて、吉継は三成の指先を感じる。

「別に、辛くはない」

ハッキリと告げられた言葉に軽く三成が瞳を見開く。

「何故だ?」
「恐れることがないからだ」
「え?」

吉継は瞳を開くと、三成の顔へ手を伸ばす。
そっと触れてきた、手は三成の髪に触れる。

「お前の髪も、」

手が下へと滑っていく。

「お前の頬も、」

撫でる指先が僅かに熱い。

「お前の唇も、」

キュッと三成が目を閉じる。

「お前の首筋さえ」

吉継は見えない瞳で優しげに微笑む。

「俺は、忘れることがないから」

見えているのと変わらないよ、と低く囁く。

「紀之‥介」

仄かに赤くなって、三成が困ったように吉継を見上げる。

「だって、ずっと」


お前だけを見ていたんだから。


「お前のそう言う、迷いのない台詞は嫌いだ」

三成は少しだけ怒ったように言う。

「ははっ、悪い」

吉継はひとしきり笑うと、ぽつっと呟く。

「今、お前は赤くなって困っているのだな」


その言葉に、一層三成は赤くなって‥‥




*前に拍手で使っていたものです。
 正確には前回6月のイベントで出した大谷本に描こうと考えて、
 無理だと投げ捨てたものです(え)
 もう少し画力があったら描くのですが、いかんせんなさ過ぎて(汗)

Back