何かが肩に当たるのを感じ、左近はゆっくりと書物から目を離した。
視線を移せば、己の肩にもたれかかって五助が寝息を立てている。
その姿に思わず笑みが漏れる。
「疲れていたんですねぇ」
昨晩から色々と雑務に追われていたらしい。
耳に聴こえる寝息はすっかり安心しているのか、規則正しい。
しばらくは意識しないでいた左近だったが、次第に耐えられなくなってくる。
(俺のこと、信頼しすぎですよ、五助殿)
苦笑が漏れる。
「食べちゃいますぜ、寝てる間に」
冗談交じりに小さく囁きかけてみる。
五助は起きる気配もない。
無防備すぎて、可愛すぎて‥。
見ているだけで、どうにかしてしまいそうで‥。
「‥五助」
そっと抱き寄せると頭へと唇を落とす。
手が五助の襟元へ伸びて‥ハッと左近は我に返る。
頬が僅かに朱を含む。
(なにやってんだ、俺は)
冗談じゃなく、今本気で五助を襲うところだった。
(オイオイ‥冗談じゃない。まるで俺が)
―――飢えてるみたいじゃないか
そう思って、居た堪れなくなる。
これもこんなに無防備に寝ている五助が悪いのだと内心思う。
傍にいたらどうなるか分かったものじゃない。
寝かせに連れて行こうと思いつき、立ち上がろうとしたのはいいが‥。
「へ?」
キュッと握られた左近の着物。
五助の手が離すまいとしている。
(こんなことになるとはねぇ‥)
これじゃ、動こうにも動けない。
ため息をつき、五助を一瞥する。
その口元が僅かに笑んでいるのを見てしまい、左近は再度赤くなる。
(そんなに幸せな顔されちゃ‥)
もう少し、寝かせてあげなくては‥という気持ちになる。
仕方なく、左近は咳払い一つ書物を手にとった。
これから数刻、誘惑に耐えると心の中で誓って‥。
終
*前のHPから持ってきたものです。
描いていた絵から妄想したお話。
左近は時と場合を考えて、
五助と距離とっていればいいなって思います。
したいけど、我慢みたいな‥。
いや‥でも結構、好きなときに好きな事している方か‥(え)
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