「じゃあ、次行きますからね?」
「はい」
向かい合ったまま、一時間ほど。
左近と五助は問答を繰り返している。
元はといえば、五助が真面目な顔で
「問答の勝負に勝ちたいのですっ!!教えてください」
などと言ってきたからに他ならない。
「まぁ、筋はいいんですけどねぇ‥。捻りがないというか」
一通り尋ねて、左近が複雑な顔で呟く。
「はっきり言ってください。‥駄目なら」
五助は既になんだか落ち込んでいる。
「‥あー‥そうですねぇ〜‥」
左近は視線を逸らし、しばらく黙った後
「ちょっと、勝つのは無理ですかね」
と少し控えめに言った。
「わ、分かってますよっ!!」
バンッと五助が畳を叩いて、泣きそうな顔で叫ぶ。
「ちょ、お、落ち着いてくださいよ」
「どうせ、私は駄目ですよ!‥毎回、先生に駄目だしされるんです」
瞳に涙をためられて、左近がまいったとため息をつく。
「五助殿には他にもっと出来ることがありますよ。
たとえば、剣術とか‥」
返事がない。
相当、ショックだったらしい。
「なんで、そんな問答にこだわるんです?」
左近は五助の頭を撫でながら尋ねる。
「そんなに必死ということは、理由があるんでしょ?」
「‥はい」
「なんなんです?」
「‥それは、いえません」
思いがけない返答をされて、左近が苦笑いする。
「言えない様な理由で俺に習いに来たんですかぃ?」
「べ、別にいかがわしい理由じゃないですよっ!!」
「なんで、そうなるんです‥。まぁ、いかがわしくても困りますけどねぇ」
むしろどんなのだと呟き、左近は小さく笑うと五助に近づいた。
「どうしても、上手くなりたいですか?」
「はい」
「教えて欲しいですか?」
「もちろんです」
五助の真剣な目に左近は笑う。
「いいですよ、教えるのは。大切な恋人のお願いですからね」
「い、いいんですか?」
「えぇ」
「あ、ありがとうございますっ」
パッと明るくなった五助に左近は内心、
(この様子じゃ、大谷殿絡みだろうな)と憶測する。
そう考えると少し面白くない。
「どうぞ、始めてくださいっ」
涙は何処へやら、
五助は自信満々に何処からでも来いという風に左近を見ている。
内心苦笑し、左近は思いついた。
「じゃあ‥そうですね」
「はい」
「お題は‥恋愛、とかどうです?」
「は?」
「五助殿は、恋をどう思います?」
「え?」
「じゃあ、愛は?」
左近は笑顔を作ったまま、五助の腕を掴んで引き寄せる。
「あ、あの‥左近殿?」
「逃げないで下さい。ほら、ちゃんと答えて。
次、行きますよ?」
「え?え?」
「こうされると、どんな気持ちです?」
「ひゃ!?」
抱きしめられて、頬に口付けられる。
五助が真っ赤になる。
「次にどうされたいですか?」
五助の耳を甘噛みして、囁く。
「俺にされたいこと、なんですか?‥優しくして欲しい?
それとも、めちゃくちゃにしてあげましょうか?」
ピクンッと五助の身体が反応する。
「なんとか言ってくださいよ。‥俺が、好きですか?」
「こ、こんなの問答じゃないですっ」
真っ赤な顔で、五助が左近を見上げる。
「え?そうですか?質問はしていますけどねぇ」
「け、けど、こんなこと誰も聞きませんっ」
「分かりませんよ?誰か聞くかも知れないですし」
「聞きませんっ!!」
「あんまり答えないでいると、一回失敗するたびに悪戯しちゃいますけど」
どうします?と笑顔の左近。
五助が困り顔になる。
「こうされると、‥ドキドキします」
震える声が”答え”を紡ぐ。
「ドキドキ?‥なんでですか?」
左近の低い声が甘く五助に問いかける。
五助が答えを紡ごうと口を開き‥
その後、みっちり問答とは仮の左近による講義が続いたのだった。
終
*問答勝負もそうですが、無双の勝負は一対一だから堪らないですw
い、いえ‥試合形式だと立会人がいますけど‥(汗)
いつもやるたびに思いますが、問答勝負ってどんなこと言い合うんでしょう?
台詞からでは少しも想像できませんが‥(汗)
なので、そこから妄想して今回はこんなお話です。
久しぶりに後日談とか書いてみました。
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