『誕生日』

「俺の誕生日、まさか忘れてたんじゃないでしょうねぇ」
「あ」

左近の言葉に向かい合って座っていた五助の笑みが引きつった。

「やっぱり」

忘れてたんですねと左近は眉を寄せる。

「殿や大谷殿が祝ってくれたのに、
あんたが来ないから まさかとは思いましたが‥」
「す、すみません。失念してました」

あうぅぅとへこんで、五助は謝る。

「今回ばかりは、簡単には許せません。
俺にどんな酷いことされても文句は言えませんよ」

意地悪な笑みを向ける左近に色々と覚悟をして頷く五助。

「理解しています。よりにもよって、左近殿のお誕生日を失念するなんて」
「そうですよ。俺たち恋人同士なんですよ?」

左近の言葉に五助が仄かに赤くなる。

「で、でも‥殿や三成様が覚えていて下さって良かったです。
やはり、誰にも祝われなかったら寂しいですしね」

慌てて話題をそらす五助を左近が見つめてくる。

「あ‥えっと、その」

じっと見つめられてしまい、どうしていいのやら五助が困る。

「そ、その‥な、なんで黙るんですか?」
「なんでだと思います?」

頬杖をついて、机を挟んで向かい合いながら左近が尋ねる。

「‥お、怒ってますよね」
「まぁ、怒ってもいますねぇ」
「‥ひ、酷い事します?」
「どうでしょうか?気分次第ですねぇ」

顔色も視線も変えず、左近はあっさり言う。

「ごめんなさい。私が忘れていたから。
もちろん、覚悟はしてます。
私の誕生日も忘れてくださって結構です。
で、でも‥」

五助はチラッと左近を見ると小声で言う。

「手加減してくださいね」

そんな風に言う五助に耐えられなくなって左近が笑う。

「え?」
「ははっ、あんたは本気で俺が酷い事するとでも思ったんですか?」
「し、しないんですか?」
「しないですよ」

して欲しいなら話は別だし、
自分はいつでも歓迎ですがと冗談っぽく言うのに 五助が首を振る。

「ただ、怒っていたのは本当です」
「あ‥」
「なんでかって言うとあんたが来なかったからじゃない」
「え?」
「もちろん来なかったのも寂しかったですけど、
さっきあんたが言った言葉に怒りたくなったんですよ」
「私の言葉?」
「殿や大谷殿が来てくれたから寂しくなかった?
そりゃ違いますよ。俺が本当に誕生日に欲しかったのはあんたなんですから」

カァァッと五助が赤くなる。

「だから、誰に祝ってもらえてもあんたじゃなきゃ俺には意味をなさないし、
本当に誕生日って言えないんですよ。
これ、理解できますかね?」

こくんっと五助が頷く。
そんな五助に顔を近づけ、左近が言う。

「ほら、あんたの口から聞かせてください。
そうしたら、俺はやっと一才歳をとれますから」

五助は一瞬戸惑った後、左近の唇に触れるだけのキスをして

「おめでとうございます‥、左近殿」

と呟いた。

「ありがとうございます」

左近はそれに笑顔で返し、そのまま五助の唇に再度キスをして

「で、プレゼントはなんですかね?」

と囁いた。



*左近のお誕生日を失念していたのは私です(だめだめ)
 なので、ネタにしちゃいました。
 五助には悪いのですが(きっと、覚えていると思うから)
 というか、銀魂の土方さんを祝っていたから失念していたんです。
 五月五日ですよね?
 土方さんとそよちゃんのラブラブ絵を嬉々として描いてました、すみません‥。
 なので、ここで申し訳程度に書いてみました、‥もう八月なのに。
 でも、私も誕生日を多くの人に失念されていたのでお相子だよ、左近(苦笑)

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