『貴方のこと』



「古い創ですけど、何時ごろのですか?」

左近の頬についている創をなぞって、五助が尋ねる。

「さぁね、‥忘れましたよ」

その腰を抱き寄せて、左近は笑って返す。

「筒井家にいらっしゃった時ですか?」

それでも五助は引き下がらず、尋ねる。

「今日はやたらと熱心ですね」
「え?」
「俺の創に興味が?」

楽しそうに笑う左近に五助が困った表情を向ける。

「す、すみません‥。別に困らせるつもりだった訳では」
「そうですね‥、俺が筒井家の家臣だった頃ですよ」
「!」
「まだあの頃は、向こう見ずで‥無茶やったもんですよ。
それで、これって訳です」

クッと可笑しそうに左近が笑う。
五助はそんな彼を見て、目を丸くするだけ。

「この言葉だけでは不満ですかね?」

ハッと五助が我に変える。

「べ、別に不満とかでは」
「そうですか?まだ、なにやら腑に落ちないような顔してますぜ」
「え」

左近の指摘に五助がうろたえる。

「い、いえ‥私にはまだまだ理解できていない貴方が多いなと思ったのです」

そう口に出して、五助は慌てて口をふさいだ。
だが、既に左近は理解していて驚愕していた。

「俺を‥、理解したくて聞いたんですか?」
「あ‥、は、はい‥」

隠し切れなくて、五助は観念した。
「実はその、左近殿について知らないことが多くて不安に思ったんです」

恋人なのに、三成様よりずっと知らないなんてと呟く。

「それは、俺も一緒ですよ」
「え?」

左近の言葉に顔を向ける。

「俺も、五助殿について知らないことがたくさんあるからお相子ですかね」

苦笑いを向けられて、五助は戸惑う。

「そうですね‥。
筒井家にいるころから、湯浅五助という人が
俺の部下であったらもっと全てを知っていたのに」

左近は小さく呟いて、五助の首筋に口付ける。

「大谷殿よりずっと、知らないなんて。悔しいですよ」

甘く囁かれて、五助が赤くなる。

「ずるいです」
「何がです?」
「そんな風に言うのは」

自分だって、どれほど島左近という人を
昔から知っていたら良かったかと思っているのに。

「ずるい」

抱きついて、同じ言葉を繰り返す。

「ははっ、すみませんねぇ‥。俺はずるい男ですから」

嬉しそうに笑う左近。
その頬の創に五助が唇で触れる。

「そうですねぇ‥、
この先の五助殿に関しては 大谷殿には負けないよう頑張りますかね」

触れながら、そう呟く。

「五助殿に、たくさん俺のこと教えてあげますから
全部、受け取ってくださいね?」

左近に抱き返されて、五助は一層抱きつく。

「手加減は、‥してくださいね?」

そうは言うけど‥。

”全部、教えて欲しいです、貴方のこと”

貴方のことを、独り占めしたくなるほど。



*前のHPからもってきました。
 ベタベタしている話が書きたくて書いたものです。
 左近は無駄にベタベタしていればいいと思います(え)
 いつも思いますが、
 無双の左近は本当なんだか卑猥ですよね(悪い意味じゃない)
 大谷でプレーしているので、四天王の一人なんですけど
 台詞聞くたび「卑猥だ」とか思います。
 もちろん、そんな左近が好きです(え)
 なので、五助に毎度セクハラしていればいいと思うわけで‥。
 だから、吉継に三成に近づくなとか怒鳴られていればいい訳で‥(笑)

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