『お願い』

「あの、お暇ですか?」

オドオドと入ってきた五助に書き物をしていた左近はポカンッとした。

「珍しいですね。俺に頼みごとですかぃ?」

冗談混じりで尋ねるとこくんっと頷かれる。

「忙しかったら断ってください。大したことではないのですが、
一人ではどうしても終わらなくて」

どうですか?と上目遣いに聞かれて、左近はドキッとした。

”頼み事を俺にしてくれるなんて‥”

嬉しすぎる。
思わずにやけそうになる顔を抑えて、ちょっと考える。
もちろん、了解するつもりではあるが

”こんなこと、二度となさそうだしねぇ‥”

意地悪を言いたくなった。

「五助殿」
「はい?」
「やってもいいですぜ」
「ほ、本当ですか!」
「ただし!‥条件があります」

ニッと意地悪く笑う。

「条件?」
「頼み事、一回につき‥俺に接吻してください」
「せっ‥ぷん?」
「えぇ」

にっこり笑う左近の顔を見つめ、真っ赤になる五助。

「あ、あの‥そ、それは!」
「嫌ですか?じゃあ、やれませんねぇ‥。俺だって、忙しい身ですから」

目をそらすと端の方で五助が困る顔が見える。
オロオロ、オロオロ‥。
耳まで真っ赤にして、目をそらしている。

”可愛い‥”

思わず笑んでしまいそうになる。
だが、いつまでも苛めてなんていられないから
冗談ですよと口を開こうとしたその瞬間、五助の唇が左近の頬に触れた。

「え?」

思わず呆然となる。

「こ、これでいいですか?」

本当にされるとは思っていなかったので、左近も赤くなる。

”まさか、俺の冗談を本気にするなんて”

まいったな、これはと内心苦笑する。

「左近殿?」

五助が黙っている左近を覗き込む。
フッと思わず笑いが漏れて、左近は五助の唇を奪った。

「これくらい、してくださいよ」

囁き落とすように言って、再度口付ける。
本当は内心、可愛くて、可愛くて仕方ない。
こんなお願いなら、何度だってされても構わない。

”本当は、あんたが相手ならただでどんなことだってしますよ、俺は”

そう心の中で囁いて、一層深く口付けを求めた。

*たまたま書いたらくがきから出来たお話。
 この時はメインがあまり甘くなかったので、 ここで補充したくてイチャイチャさせていた記憶が‥(苦笑)

Back