「あっつあつでしたね、篤時先輩」
笑顔の章明に篤時が頬杖をついたまま、視線を合わせない。
「忘れろ、消滅させろ、いますぐにだ」
「無理ですよ。ご近所さんだって、噂してましたし」
あそこまでやったら、しばらくは噂の的ですよ?という章明に篤時が机に突っ伏す。
「なんで、俺があんなことっ!!あんなのらしくねぇし、柄じゃねぇのにっ」
「いいじゃないですか。メイコさん、喜んでましたよ」
「‥メイコとは、そういう関係にならねぇって買ったときに決めたんだよ」
「初恋の人に似ているから?」
章明の言葉には答えず、篤時は
「悔しいから、カイトがミクを本気で好きになったらやらせてやる。
‥ミクに吹きこんどくか」
と呟く。
章明はそんな篤時を見て、小さく笑う。
「先輩も結構、臆病ですよね」
「‥お前ほどじゃねぇけど」
後輩の言葉にボソッと返してから、打って変わったように笑顔を作る。
「で、‥お前はどうなわけ?」
「え?」
「好きな女とかいないのかよ。俺だけからかわれるのは、ごめんだぜ?」
「ぼ、僕は別にっ」
突然話題を変えられて、章明がうろたえる。
「隠すなって。‥いないとは言わせねぇぜ?」
「せ、先輩っ!!というか、今は先輩の話をっ」
「俺の?俺のは終わり。ほら、言えよ」
「ぜ、絶対嫌ですっ」
その外で、ドアノブをまわそうとしていたメイコは中の賑やかな声に笑う。
手には紅茶とケーキ。
「とっても楽しそうね。私も入れてもらわなきゃ」
ふふっと小さく笑って、ドアを開けた。
*篤時がいざとなったときになんでも言えるのが、たぶん章明。
信頼してる後輩だろうなって‥。
KAITOにはたぶん相談しない(笑)
弱みをあまり人に見せないのが篤時って男だと思うのです。
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