『冬の日の贈り物』



「あれ?涼宮さんたちはまだですか?」

部活の扉を閉めながら、小泉は部屋の中にいる長門に尋ねる。

「まだ」

長門は本から少しだけ目を離し頷くと、また本に目を落とす。

「そうですか‥。あ、長門さん」
「なに?」
「明けましておめでとうございます」

お久しぶりですね?と口にする小泉に長門は本を閉じると
しっかり視線を合わせ

「‥明けましておめでとう」

と返す。

「今年もよろしくお願いしますね」

にっこりと笑って言う古泉に頷くことで、返事をする。

「あぁ、そういえば」
「?」
「これを忘れていたんです」

小泉は鞄から小さな箱を取り出し、手渡す。

「メリークリスマス、長門さん」
「‥もう、終わっていると思う」

古泉の微笑みに少しだけ困ったような声でそう返す。

「はは‥そうですね。終わっています」

終わっていますけど‥と笑いながら口にして

「去年は忙しくて渡せなかったので」

と箱を指差す。

「貴方にプレゼントです」

そういわれ、長門が少しだけ目を丸くする。

「僕のような学生にはそんなものしかプレゼントできませんが、
見た時に長門さんに似合うなと思ったんですよ」

開けてみてくださいと促されて、箱のリボンゆっくりと解いていく。
箱を開いて、長門が古泉を見上げる。

「イアリング‥です。学校ではつけられませんけどね。
ほら、今は穴を開けなくても
ピアスみたいに見えるイヤリングがあるんですよ。それです」

気に入りませんか?と問われ、長門は首を横に振る。

「これ。‥この形、好き」

指差した先にあるイヤリングの形。

「あぁ、やはりそうでしたか」

その形は、雪の結晶。

「有希さん、‥だからこうしてみたんです。
良かったですよ、気に入ってもらえて」

少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる長門を見つめ、小泉は満足そうに笑う。

「つけてみてください」

似合うと思いますから‥と促されて、長門はつけようとして‥やめた。

「できない」
「何故ですか?‥あ、学校だからですか?」

そうですよねと苦笑する古泉に長門は首を横に振り、はっきりと

「貴方がくれたものを、ここで失くせない」

と口にする。
その言葉にカァァァッと古泉の顔が赤くなる。

「え、で、ですが、別にこんなの安いですし」

失くしてしまったら、買いますけど‥とオロオロする古泉に

「コレじゃなきゃ、駄目。貴方が私に、クリスマスにくれた」

とハッキリ言う。


だから、これがいい。これ以外は意味がない。


長門のストレートな言葉に一層赤くなる。

「あぁ、‥ありがとうございます、長門さん。
そんなに喜ばれると嬉しいですよ」

まだ赤い顔で、苦笑する古泉。

「ですが、本当に気を遣わないで下さい。
何度だって、貴方にプレゼントしますから」
「‥そう」

長門は少しの間黙っていたが、
椅子から立ち上がると古泉に近寄って背伸びをした。
瞬間に古泉の頬に唇が触れる。

「お返し」
「え?え?」

カァァッとまた古泉の頬が色づく。

「何も私は用意していなかった。だから、これ、お返し」
「な、長門さんっ」
「大丈夫、ちゃんとつける。‥貴方と出かけるときにでも」

長門はあっさりとそう口にすると何事もなかったかのように、
椅子に座り本をめくり始めた。
残された小泉は赤い顔のまま、どうしていいのか分からず立ち尽くす。
そこにハルヒや、キョンが入ってくる。

「おっはよー、有希、古泉君ッ!
って、どうしたの、古泉君?顔、赤いわよ?」

ハルヒに指摘されて、小泉は苦笑い。

「風邪でも‥冬休み中に引いたかもしれないです」
「いけないわね〜、それは!大丈夫なの?」
「えぇ」

そう受け答えする古泉とハルヒの後ろでキョンが

「長門、いいことでもあったのか?なんだか嬉しそうだな」

と長門に尋ねる。
それを聴いて、また熱くなっていく頬に小泉は苦笑するしかなかった。



*あぁ〜季節外れでごめんなさいッ!!
考えてはいたんです、前から!
けど、クリスマスのときを逃し、そして新年も逃し、
新学期の季節も逃した駄目な子です(泣)
雪といったら、長門さんなので冬は彼女の季節!と勝手に思っています。
けど、雪ネタだと素敵なサイト様のと被りそうだったので
だったらまた古泉とラブラブするのを書こうと思って
‥いえ、思っていた‥思っていたんですが。
す、すみません‥。
つまるところ、プレゼントを用意して上手に出たはずの古泉を
あっさり覆す長門さんというのが描きたかったのです。
別に付き合っているかというのは考えていないのですが、
なんだか会話がそれっぽい感じですね。
たぶん、まだ‥だと思います。
久しぶりなので、台詞がおかしかったらすみません‥(今回謝ってばっかりだ‥)

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