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『手と手』

「涼宮さん達は帰ったんですか?」
部活に古泉が顔を出した頃には夕闇が迫っていた。
「‥そう」
一人、本を読むのに残っていたのか長門が無表情のまま返す。
「そうですか‥。明日、怒られてしまいますね」
あまり反省しているようには見えない笑顔で、古泉が呟く。
パタンッと本を閉じる音。
長門がすくっと立ち上がる。
「長門さんも、お帰りですか?」
コクンッと長門が頷く。
「では、途中までどうですか?」
長門は向けられた笑みに「そ」とだけ呟いて、鞄を取った。

***

「すっかり冬ですね」
白い息を吐き出して、古泉は手をこする。
長門はさほど寒くなさそうな顔で横を歩いている。
「最後まで掃除をさせられていたので、未だに手が悴んでまして」
聞いているのかいないのか解らない長門に古泉は気にすることなく話しかける。
「まだ、冷たいです」
「‥‥そう」
最後まで話し終わると長門が相槌を打った。
その返事に古泉の唇が緩む。
「長門さんは、寒くないんですか?」
長門は何も言わない。
その手を古泉は握るとコートのポケットへ入れた。
「あぁ‥、長門さんの手は暖かいですね」
長門の瞳が少しだけ大きくなって、古泉を映す。
「こうすると、寒くないでしょ?
僕、結構早く暖かくなるのでホッカイロ代わりくらいにはなりますよ?」
にっこりと微笑みながら、古泉は長門を見る。
「‥‥そう」
「もしかして、嫌ですか?」
「別に‥‥」
このままでいいと呟いて、長門は目をそらす。
「そうですか‥、嬉しいですよ」
繋いでいる手と手が、暖かくなっていく‥‥。

”心地いい”

どちらともなく、そう思って。

*これは、ちょっと前に書いたのに消えちゃったものの書き直しです。
 こんなんだったと思うけど、結局おちてません(泣)

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