『古泉一樹の憂鬱』

目線が追いかける先が、
”自分じゃない”なんてことに揺らぎはしないと、そう思っていた。

***

彼女の目線の先、いつでもいるのは彼。
それを眺めている自分はある意味で滑稽かもしれない。
飽きもせず、彼女は彼を大きな瞳に映している。
そこに何か感情が潜んでいるわけではない。
見えはしない。

”それでも少し、妬けますね”

興味の対象という点においては同意見で自分も興味がある。
だが、そういう意味で見なければ少しだけ違った感情が入る。
ヒューマノイドインターフェイスというのには感情があるのだろうか?
こうやって近く接点を持ったことがないのでわからない。
それでも、彼を追う瞳は忙しなくて、勘違いを起こす。

”貴方は彼が、好きですか?”

口に出していうつもりなんて、これっぽっちもない。
例え、彼が涼宮ハルヒを止められる唯一の存在であり、興味があったとしても
これを譲るつもりなんて、もうとうない。

”僕も、どうかしてますね”

学校生活を満喫するなんて論外だ。
ましてや、恋愛など‥。
それでも、今自分が揺らいでいる事実はぬぐえない。

”貴方がいけないんですよ、僕を乱すから”

そう想いを込め、見つめているとふっと目が合う。

「何?」
「いえ」
「‥‥‥そう」

会話につながりなんてない。
彼ではないから、僕は彼女にこれ以上を求めない。
求める必要もないからで、そこに個人的感情が入り込む余地はない。

「気になりますか、彼が」

なのに、口からついて出たのはそんな言葉。
彼女の瞳が僕で埋まる。
不思議そうな顔。
無表情のまま、彼女は反応に困っている。

「冗談です。‥貴方のスペックに、恋愛感情があるのかなんて問うてはいませんよ」
「‥‥」
「今のも軽い冗談です。思い悩まれるとかえって、言うのに躊躇います」
「‥‥そう」

彼女はそう呟き、目をそらす。
これでいつもどおり。
何も始まらず、何も起こらない会話。
だったはずだが。

「‥‥知りたい?」
「え?」

その一言が、僕の何かをまた‥‥強く揺るがした。

*うちの古長は古→長です。
 ただし、長門はキョンに片思いなのではなく 実は古泉が思うような好意を持っていないって設定。
 ハルヒはちゃんと全部読破していないので、 しゃべり方あっているかはなはだ疑問です。
 アニメは観たのですが‥。
 朝比奈みくるの大冒険で古泉に無言でくっついている長門が大好きです!
 サイン話も古長ですよね? 古泉ほぼ無視で話す長門さんと長門と話したくて仕方ない古泉が‥(笑)

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