バタンっという扉を閉める音にミクは起き上がった。
「ご、ごめん、ミク。もしかして、寝てた?」
「お、お兄ちゃん?」
突然の来訪者がカイトだと知ってミクは驚く。
「どうしたの?」
「うん‥ちょっとね」
カイトはなにやら言いづらそうにしているが、
部屋が暗いせいでミクには彼の姿が分からない。
「電気つける?」
そんな風に尋ねると
「ううん‥、ごめん。このままにして」
と返事が返って来て、カイトが慌てたようにミクのいるベットまで近づいてきた。
「ご、ごめんっ、すぐ出て行くから」
そして、突然ミクのベットに潜り込む。
いきなりのことにミクは慌てる。
「お兄ちゃんっ」
カイトとの距離が一気に縮まって、
その上こんな風にベットの中に彼がいることにドギマギするミク。
途端ドタバタと階段を上がる音が聞こえ、メイコが扉を開けた。
「ねぇ、ミク。カイト見なかった?」
なにやら不機嫌そうなメイコの様子にミクはオロオロし、毛布の中のカイトを見る。
カイトはブンブンと首を振る。
どうやら、いないと言って欲しいらしい。
「ううん、‥私見てないよ」
「そう?寝ているところ悪いわね」
こっちに来たと思ったのにとメイコがブツブツ言う。
安堵しかけたミクとカイトにメイコは突然
「ねぇ、ミク?なんか毛布やたらと膨らんでない?」
と尋ねてきた。
さすがはメイコ、なかなか鋭い。
これには、ミクもカイトもドキッとする。
「え?あ‥これ?
これはね、兄さんに買ってもらったネギの抱き枕入れているからだよ」
ミクがとっさに嘘をつく。
その間も二人はメイコにばれるんじゃないかとドキドキする。
メイコはしばらくミクを見つめていたが
「そう、‥悪かったわ。お休み」
と少し優しい口調になって出て行った。
パタンッと扉が閉まり、階段を下りていく音を聞いて二人は安堵する。
カイトはもぞもぞと毛布の中から顔を出し、苦笑いする。
「ありがとう、ミク。めーちゃん、マスターと喧嘩したんだって。
そんな時に俺がめーちゃんの大切なコップ割っちゃったから、
凄く怒っていて許してくれなくて」
だから逃げてきたんだというカイトにミクは赤くなって
「お、お兄ちゃんの役に立ててよかった‥」
と呟く。
その顔を見た途端カイトは、はたっと気がつく。
ネグリジェ姿のミクとベットの中で二人っきり。
ボッとカイトの顔も赤くなる。
「あ、えっと、ご、ごめん、ミクっ!!俺、なにしてるんだろう。
年頃の女の子が寝ているところに押し入るなんて‥。
どうかしてた。‥本当にごめん」
何度も謝り、慌てるカイトにミクが首を振る。
「ううん、大丈夫。だって、お兄ちゃんだし‥それにミクも眠れずにいたから」
「っ!?」
カイトはミクの言葉に一層赤くなる。
(俺だからいいって言うのは、ダメだと思う‥)
無防備な妹の発言に兄であることを一瞬忘れそうになって、カイトは頭を振る。
「ともかくも、俺、帰るよ。このままここにいたら、ミクが眠れないし」
少しばかり引きつった笑いでも笑顔を作って、カイトはベットを抜け出そうとした。
その袖をミクが引く。
「え?み、ミク?」
ミクが寂しそうにカイトを見上げる。
(お兄ちゃんと一緒にいたい)
そんな想いを込めて、見つめているとカイトが観念したように行こうとするのをやめた。
「いて欲しいの、ミク?」
優しく尋ねてくるカイトに
「うん」
と頷く。
「あのね、寝付けないからお兄ちゃんとお喋りしたい。
メイコお姉ちゃんの怒っているのが収まるまで‥。ダメ?」
小首をかしげて尋ねるミクに
(これには勝てないよ)
と内心苦笑し
「うん、そうだね。じゃあ、少しお喋りしようか」
とミクの隣に寝転んだ。
ミクはそれを見て嬉しそうに笑うと隣に同じように寝転んだ。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「ん?」
「手も繋いで。ね?」
妹の可愛いおねだりに
「うん、繋ごう」
とカイトは苦笑気味に答える。
(嗚呼‥、繋いだ手から俺のこのドキドキが伝わらないといいけど)
既に少し暖かすぎる気がする手にカイトはそんな風に想う。
(繋いだ手から、ミクのドキドキがお兄ちゃんに全部伝わればいいのに)
幸せなミクはその想いを兄に伝えたくて、そう想う。
―― 煩いくらいに胸がどきどきしているから‥
終
*カイミク熱がぐわっ!!って感じになったので、書いてみました。
別に夜這いした話じゃないです。
書いていて、あれ?これ、夜這いじゃんと思った私はけしからん奴です‥えぇ。
にしても、パターンがなんか前のと一緒?(汗)
でも、ドキドキの種類がちょっと違うし、いいか‥。
カイトはミクのことを妹に見なきゃ〜って無駄に頑張っていればいいと思います。
鈍感なのもあって気がつかないことが多いけど、自分で意識する時は大いに慌てればいい。
逆にミクはいざとなったら、ばれてもいいくらい迫ってくれればいいw
どんなカイミクでも好きなので、今回は少しだけ積極的なミクで。
そのうち、お兄ちゃんにも逆襲させたいです。
ちなみにどうでもいいことですが、篤時のボーカロイドたちは部屋を持っています。
篤時の家が広いので、リンとメイコ、カイトとレン、でミク一人部屋みたいな感じです。
章明の家は、狭いのでみんなパソコン内のフォルダーに部屋持っています。
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