『幸せ』


「お兄ちゃん?」

リビングに戻ってきたミクは横になって寝ているカイトを小声で呼んでみる。
パチッとカイトの瞳が開き、

「あれ、‥ミク?」

と眠そうに笑った。

「寝てたの?」
「うん、‥ミクの声が心地よくて眠ってた」

カイトの傍に腰掛けたミクにカイトは寝転んだまま答える。

「マスターは?」

みんないないの?と尋ねるカイトにミクは頷く。

「うん、みんな買い物に行っちゃった」
「そっか。ミクはお留守番?」
「うん。‥それに、お兄ちゃんが心配だったし」

その言葉にあははっとカイトは笑う。

「そっか、ごめんね、ミク」
「あ、え、えっと、別にお兄ちゃんが留守番できないとかじゃないよっ!!」

ミクはその言葉にブンブンと首を横に振る。
本当はカイトと一緒に居たかったから、残ったという言葉を飲み込んで。

「うん‥分かってる。ありがとう、ミク」

一人だと寂しいもんねとカイトはミクの頭を撫でながら、言う。
ミクはほんのりと頬を染めて、カイトにされるがままになった。

「ミク、歌上手くなったね」
「そうかな?」
「うん、上手」

頭を撫でながら、カイトは瞳を閉じる。

「すごく暖かくて、幸せな気分になる」

カイトの言葉に、分からないとミクは首を傾げる。

「あはは‥そうだよね、自分じゃ歌っているから分かんないよね」

カイトはそう言うと目を開く。

「ねぇ、ミク」
「なぁに?」
「ここ来て」

カイトは己の腕を伸ばして、反対の指で指し示す。

「え?え?」

ミクは意味が分からず、目をパチパチさせる。

「ほら、ここ。そのまま横になると辛いでしょ?
けど枕は俺が使っているから、ミクはここ」

俺の腕を使ってとカイトは促し、微笑む。
ミクの顔が真っ赤になる。

「え‥で、でも」
「いいから」
「あ、お、お兄ちゃんっ」

腕を引かれ、ミクは仕方なくカイトの腕を枕に寝転んだ。

”うわっ‥お兄ちゃんが近い‥っ”

まともにカイトの方を見ることもできず、ミクは固まる。
カイトはそれには気が付かず、歌を口ずさみ始めた。

「お兄ちゃん?」

ミクはオドオドとカイトを見る。
カイトは歌うのを止め

「目、瞑って。暖かくて、気持ちいいから」

とミクの方に身体を向けると囁く。
ますます近くなったカイトにミクは急いで瞳を閉じる。
心臓音が大きくて、ミクは焦る。

”お兄ちゃんに気づかれちゃうよっ”

身体が熱い。
カイトから伝わる熱とか、匂いとか、呼吸とか。
全部がドキドキしてしまう要因でミクはジッとするのに一苦労。
だが、そのうちカイトの心地いい歌声にうとうとし始める。

”本当‥暖かい‥”

日差しの暖かさに幸せな気持ちになってくる。
心が落ち着いてくると自分以外の心臓の音が聞こえることにミクは気が付いた。
目を開けば、カイトの瞳と目が合った。
歌を歌うカイトの優しい眼差しと少しだけ赤い顔。

”お兄ちゃんもドキドキしてる?”

ミクがジッと見ているとカイトが歌を歌うのをやめて

「ミク、これって幸せな気分になるでしょ?」

そんな風に尋ねてくる。
ミクはそれに顔を綻ばせて

「うん、幸せだね」

と答えた。



*久しぶりにカイミクです。
 伊達いつの質問に腕枕とあって、
 そういえば腕枕はしたことないと思い大好きなCPでやらせて頂きました。
 しばらく書いていなかったのでカイトが喋り方今までどおりか怪しいです(汗)



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