『花占い』
「好き、嫌い、好き‥」
プチプチと花びらをちぎるミクの姿を見つけ、カイトは「お?」と思う。
なんだか楽しそうにも見えるし、不安そうにも見える背中。
気になって、背後から近づいて声をかける。
「ミク」
「ふぇ?」
ミクが振り返って、驚愕の表情になる。
「お、お兄ちゃん!?」
「うん、‥おはよう」
今日は早いねと朝の挨拶を言ってから、カイトはミクの隣に座って花を指差す。
「姉さんに聞いたら、ミクは土手に遊びに行ったって言うから来たんだ。
なにをしてたの?」
「え‥」
カイトの言葉にミクはしばらくオロオロしてから、
花をカイトに見せた。
「あ、あのね‥占いなの」
「なんの?」
「お花を使った占い。マスターのお姉さんから教わったの」
それならば、ミクが花びらをちぎっていたのも納得できる。
「そうなんだ‥。で、結果はどうだったの?」
「それはまだなの‥」
「そっか。じゃあ、邪魔しちゃったね」
カイトの言葉にミクが首を振る。
「ううん‥いいの!お兄ちゃんもする?」
「ん?そうだね、面白そう。どうやってするの?」
カイトの言葉にミクは傍にあった、花を
「ごめんね」
と一言謝ってから手折り、カイトに手渡した。
「春菜さんがね、‥お花にも命があるから占いするときは感謝の気持ちを込めて
それから挑んでねって言ってたから」
「そっか、そうだね。‥ありがとう、お花さん」
ミクの言葉にカイトは微笑んで花を貰うとミクの手元を見た。
「花びらを千切るの?」
「うん。誰でも良いから大切な人を心の中で想って、
その人が自分を好きか嫌いか占うんだよ。
こうやって」
ミクが花びらを千切って
「好き、嫌い‥」
と呟く。
カイトはなるほどと頷き、己も妹の真似をする。
「好き、嫌い、好き、嫌い‥」
二人の声が自然と重なり合う。
途端、ミクの声が途切れる。
「終わった?」
「‥うん」
カイトの言葉にミクが落ち込んだ様子で頷く。
「どうしたの、ミク?」
「‥嫌いって」
出ちゃった‥と今にも泣きそうなミクにカイトは慌てる。
「だ、大丈夫だよ!占いだって外れることもあるし‥、
今は嫌いでもそのうち好きになってくれるよ?」
「‥そうかな」
「そうだよ」
カイトはミクの頭を撫でて、慰める。
「でも、‥もしミクが嫌じゃなかったら
誰のこと占っていたのか教えて欲しいな」
「え!?」
カイトはミクを慰める延長で話題を変えようとしただけだったのだが、
ミクが驚きの声を上げたので困惑した。
「ご、ごめん‥。聞いちゃダメだった?」
言わなくてもいいけど‥と慌てるとミクが少しだけ赤くなって
「あのね、占ってたのはね‥」
とカイトの耳元へ唇を寄せた。
「お兄ちゃん」
掻き消えそうなほど小さな声がカイトの耳に入ってくる。
カイトの顔も赤くなる。
ミクはカイトから距離をとると赤くなった顔を俯かせた。
「そ、そっか‥。そうなんだ」
カイトは動揺していて、そうしか言えない。
冷静にならなきゃと自分に言い聞かせ、手元を見てハッとする。
「ね、ねぇ‥ミク」
「?」
カイトの呼びかけにミクが顔を上げる。
「ミクの占いはさ、‥俺がミクのこと嫌いだって出たんだよね?」
「う、‥うん」
「じゃあさ、ミクは俺のこと占ってくれたんだから俺のこと好きなんだよね?」
「?‥う、うんっ!」
カイトの問いにミクが力強く頷く。
「あのね、‥俺が占っていた人、誰だか分かる?」
「?」
カイトは小さく笑うとミクがしたように彼女の耳元へ唇を寄せて
「ミクだよ」
と囁いた。
「お、お兄ちゃんっ!?」
赤くなってうろたえるミクにカイトは少しだけ赤い顔で微笑んで
「だから、ミクが俺のこと好きならこれ、最後まで占わなくても良いよね」
と呟く。
「だって、ミクが俺のこと嫌いって出たら嫌だし」
「お兄ちゃん‥」
カイトは持っていた花をミクの頭に挿してやると
「それに、俺がミクのこと占っていたってことは、ミクが好きってことだよ」
と笑った。
ミクは驚いていたが、明るく笑い返した。
「帰ろうか。‥マスターも起きる頃だし」
「うん」
カイトは立ち上がるとミクの手を握った。
ミクもその手を握り返し
「お兄ちゃん、大好きっ」
と笑う。
「うん、俺もミクのこと‥大好きだよ」
カイトはそれに微笑み返した。
終
*しばらくアカハクばっかり書いていたので、初心に戻ってみました。
カイミクはほのぼのの度合いがアカハクの二倍くらいならいいといつも思っています。
カイトとミクはいつでもお互いを「好き」だと言っていればいいと思います。
(もちろん、意味的な部分が違いますが)
というか、本当にミクは可愛い子だと思います。
ミクの恋愛の曲を聴くといつもあまりの可愛さにそわそわしてしまう‥(え)
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