「ご、ごめん、ミク」
歌い終わると慌てて、カイトが手を離す。
ミクは驚いたが、俯いたままフルフルと首を振る。
「勢いとはいえ、歌っている途中あれはなかったね」
カイトはどう言い訳していいか分からず、視線を宙に漂わせる。
ミクは赤い顔で俯いたまま。
そこへガチャンッと音がして、篤時が顔を出す。
「ほら、差し入れ」
ニッと笑った極悪面は何処か楽しそうだ。
カイトは少しだけ困った顔をしてみせ、受け取る。
「バレンタインだからメイコがみんなにってさ。冷たいうちに食えよ」
「姉さんにはありがとうと伝えてください」
篤時は右手を上げるだけで返事をして、外へ出て行く。
「食べる?」
カイトは渡されたビニール袋からチョコ味の冷たいアイスを取り出し、
ミクの赤くなった頬へ近づける。
「冷たいっ」
びっくりして、ミクが顔を上げる。
「食べようよ」
その顔に微笑んで、カイトは座る。
ミクはそれをみて、
「うんッ」
と頷くと隣に並んで座った。
寄り添って、二人はアイスを口にした。
ひんやりした感触が舌の上で溶けていく。
「甘いね」
「甘い」
ミクの呟きにカイトが同意する。
”溶けていくね”
口に出さず、二人は同じことを思う。
”幸せ‥”
終
*これを書いたときは、まだ二月だったのでチョコレートアイス。
うちの兄さんはちょっとカッコイイ路線目指してます(笑)