『赤いお兄さんは心配性』

「んなに近寄るなよっ」

今にも殴りかかりそうなオーラを出すアカイトにデルはため息をつく。

「なにやってるんだ、‥アカ」

覗き見なんて変態のすることだろ‥といつもの毒舌を繰り出しながら、
デルはアカイトの視線を追う。

「あぁ‥姉さんか」

視線の先は、ハク。
今ちょうど、遊びに来たカイトに歌い方を教えてもらっているところらしい。

「いいんじゃん?別に。あれだって、あんただろうに」

カイトの派生がアカイトだろ?と言うデルを思いっきり睨んで、 アカイトが怒鳴る。

「あんなのと一緒にするなっ!
あいつは甘いアイスしか食わないアイス狂だし、
眼鏡かければ鬼畜王だし‥。
だいたい、あんなへたれと一緒にするなよっ」
「あんただって似たようなもんだろ」

姉さんに告白もできないくせに‥と言うデルにアカイトが赤くなる。

「う、うっせぇ!
ハクはそこら辺の女と違ってデリケートなんだよっ。
怯えて、嫌われたらどうすんだっ」

と叫んだと思うといきなり落ち込むアカイト。

「嫌われる‥か。俺が嫌われる‥」

ブツブツ言うアカイトに

「あんたの方がデリケートじゃん」

とデルが突っ込む。

「しょうがねぇじゃん。‥本気で好きになったの、ハクが初めてだし」

どうしたらいいかわからねぇし‥と呟くとアカイトはその場に座り込んだ。
デルはその横に腰を下ろすと煙草に火をつける。

「あのさ、前から聞きたかったんだけど」
「ん?」
「あんた、なんで姉さんのこと好きなんだ?」
「え?」
「だって、良いとこなしだろ?」

自分の姉にさえ毒舌ぶりを発揮するデルはハッキリ言う。

「歌下手だし、性格暗いし、バイトしても三日ともたないし、ツマンネだし」

まぁ、確かにちょっと外見だけはいいけどさと言うデルにアカイトが怒鳴る。

「んなことねぇよ!ハク、いいところだらけじゃねぇか」
「どこら辺が?」
「あの御淑やかなとことか、守ってやらねぇとやばそうなとことか、
愚痴だらけなとことか、酒に弱いとことか」
「あー‥」

聞くまでもなく恋は盲目ってやつ?とデルは内心思う。

「惚気は、聞きたくないけど」
「の、惚気?してねぇよっ!」
「そっか。‥いちお、見てるんだ、姉さんのこと」

スタイルとか顔だけかと思ったと煙草をふかす、デルにアカイトが眉を寄せる。

「はぁ?スタイル?」
「そ。‥だって、姉さんスタイルいいし」

特に胸。
その言葉にアカイトが咳き込み、デルが眉を寄せる。

「なに?いきなり」
「誰がんなこと言ってたんだよ‥」
「別に。一般論。巨乳って人気だと思ったから」

さらっと言うデル。

「マジかっ!?一般ではそうなのか?」
「え?‥まぁ」
「余計、心配じゃねぇかっ!!」
「は?」
「どうすんだよっ、お前、姉さん心配じゃねぇのか?」
「なんで?」
「あんな可愛いのに、一般論で連れ去られたらどーすんだよっ!!
ただでさえ、あんなきわどい服装!
‥ダメだ‥、今年はもう少し色気のない服やらなきゃ」

喜怒哀楽をくるくる変えるアカイトを見つめ、デルは苦笑い。


姉さんも変なのに好かれてるよなぁ‥。
まぁ、見てて楽しいけど。


「デルっ!!」
「ん?」
「確かに俺はハクに告白もできねぇよ。
けど、本気でハクのこと好きだから」

誰にもやらないから。

「え?」

いきなり真剣な顔で言われてデルは思わず煙草を落とす。

「二度とカイトと同じへたれだって言わせねぇからなっ」

アカイトはそう宣言すると少しだけ赤くなった顔を隠すようにさっさと行ってしまった。
残されたデルはしばらく呆然としていたが、笑った

「変な男」


まぁ、これなら姉さんは安泰かもな。


改めて煙草を取り出して、デルは己の姉を見つめた。



*デルは普段別にハクのこと案じていないのに、
 突然気まぐれ程度に案じれば良いなぁって思ったお話。
 アカイトはハクに対して盲目だといい。
 ハクの愚痴なら喜んで聞くぐらいに。
 というか、へたれなのはどっちも同じです。
 カイト種はそういう風に出来てるんだよ★(え)

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