「命令するんじゃねぇよっ!てめぇ、きにくわねぇんだよ!!」
「うっせぇ!!マスターに従わないとはいい度胸じゃねぇか!!」
腕まくりをして、火花を散らす二人は既に一触即発しそうな雰囲気だ。
間に挟まれているカイトが苦笑をしていて、かける言葉を失っている。
「俺のマスターはてめぇじゃねぇだろうがっ!」
「ボーカロイドのくせに、あれこれ文句つけてるお前が悪いんだろうがっ」
アカイトと篤時がこれを始めてたぶんもう一時間は経った。
止まるどころかヒートアップし続けている。
(これはもう、何を言っても駄目かな)
カイトはため息をついて、二人を見る。
根本的に似ている二人はどうやら同属嫌悪というやつらしい。
(どっちもある意味頑固だしね)
諦めに似た境地を悟ったカイトは苦笑いのまま。
その間にも二人は置いてある低い机に足をかけた。
「俺とやろうってのかよっ!」
「おぉっ、やってやろうか!?」
(あぁ!?乗せられてるっ)
止める身にもなって欲しい。
啖呵を切った二人はもうどうやら喧嘩モード。
アワアワと困っていると
「なにやってるわけ?」
とレンが呆れたように入ってきた。
「れ、レン!?」
「何?」
「そ、その」
実はね‥と兄の立場がないなぁと思いつつ、
訳を話すとレンは顔を変えず二人の間に立った。
「れ、レン?」
篤時が最初に気が付いて、乗せていた足を下ろす。
レンは一瞬だけ己の主人を見て、アカイトを睨んだ。
「なんだよ、餓鬼は引っ込んでな」
アカイトはまだ喧嘩腰。
「黙れよ、バカイト」
そう言った声は低く、冷たい。
「な!?」
アカイトの動きが止まる。
「篤時に、口答えするんじゃねぇよ‥亜種プログラムの分際で」
レンの緒っぽいものが切れた音が確かにカイトには聞こえた。
(レン、怖っ!?)
この家の中で一番怒らせると怖いのがレンだ。
その上、レンはなにやら篤時に懐いていて、気に入っている。
「う、うるせぇよ!そこの馬鹿が俺の音が外れてるってッ」
バンッと机を叩く音。
「なに?‥篤時をなんだって?もう一回言ってみろよ」
前髪から見える瞳が怖いくらいに厳しい。
アカイトでさえ後ずさる。
「ねぇ、言ってみろよ‥。なんだって?」
「っ」
「もう一回言ってみてよ、”お兄さん”?」
ニッと笑う笑顔は凶悪で‥。
「お、覚えていろよっ!!」
アカイトは涙目になって出て行く。
カイトも篤時もレンから出ているどす黒いオーラに動きを止めている。
そんなレンがゆっくりと振り返る。
「篤時」
呼ばれた篤時が顔を引きつらせる。
「な、なんだ?」
「怪我、ないわけ?」
そう尋ねたレンはもうすっかりいつもどおり。
「え?お、おぅ‥」
「そう、ならよかった。
まぁ、篤時があいつに負けるなんてありえないけど
怪我されたら困るし」
「さ、サンキュー」
「別に、心配して言った訳じゃないからな!
ミク姉とか、メイコ姉が心配するからさ‥」
「気をつけるよ」
篤時の声は何処か怯えている。
カイトはそんなマスターとレンを見て、
(レンがマスターの味方でよかったかも)
と密かに思った。
終
*レンレンにされているここ最近(苦笑)
そんな訳で、レンのお話書いてみました。
この場合、一番可哀想なのは兄さんですか?
亜種でもダメダメな兄さん(笑)
誤解されないように言っておきますが、うちのレンはリン至上主義です。
たとえ、マスター相手でもたぶんリンのことならリンを取ります。
でも、篤時のボーカロイドの中でメイコの次にマスター好きだと思います。
うちのボカロは基本、マスターが大好きです。
しょうもない後日談なんかがあります。