「ったく‥スランプだからって、俺らが部屋の掃除かよ」
ブツブツと文句を言いながら、散らばっている紙を集めるアカイト。
それに苦笑しながら
「でも、素敵な曲を歌わせて貰っているからこれくらいしないと」
とハクが返す。
「まぁ、そうだけどさ」
アカイトはハクををちらっと見て、
「そうだよな‥ハクとデュエットできるかどうかもかかってるわけだし」
と呟く。
「何かいいましたか?」
「べ、別になんもっ!!」
独り言を尋ねられ、アカイトは笑って手を振る。
「とっとと終わらせて、どっか行こうぜ。
なんかカイトの奴がアイス安売りとか言ってたし」
「本当ですかっ!!食べたいですっ」
アカイトの言葉にハクが嬉しそうに目を輝かす。
「じゃあ、倍の速度で終わらせる」
ハクと出かけられると分かって、アカイトも嬉しそうに笑う。
二人は黙々と紙を拾い集めはじめた。
***
「なんとか綺麗になりました」
「あぁ」
綺麗になった床に二人はお互いを見て、笑いあう。
「んじゃ、この紙を束ねたら出かけようぜ」
「はい」
アカイトが器用に紙を束ねていく。
それをジッと見ていたハクが
「あ」
と声を上げる。
「なに?」
アカイトはそれに顔を上げる。
「アカイトさん、怪我」
ハクはアカイトの手を取って、人差し指を差す。
いきなり手を握られ、アカイトは少し赤くなりつつも自分の指を見る。
確かに紙で切ったのか切り傷がある。
「本当だ。‥いつの間に切ったんだ?」
「痛いですか?」
心配そうなハクにアカイトは首を振る。
「平気、平気。ちょっとだし、舐めときゃ治るって」
そう笑って言った途端、ハクがアカイトの指を口に含んだ。
「っ!?」
アカイトの顔が限界まで赤くなる。
「は、は、は、ハクっ!?」
動揺するアカイトには気がつかず、ハクはアカイトの指を舐める。
離してくれそうにない。
「あ、あのさ‥、ハク‥」
アカイトはそれに耐えられなくなって、声をかける。
嬉しい気持ちもあるから離して欲しくないが、
逆にこんなことされて動揺している自分を見られるのも嫌だという気持ちがある。
それ以上に‥。
すげぇ‥なんかエロいんだけど‥
とか思っている自分が嫌で
「も、もう平気だからさ」
と呟いた。
ハクはそれに気がつき、指を離す。
「あ、あの‥もう痛くないですか?」
心配そうに見上げられ、アカイトは勢いよく頷く。
「当たり前だろっ!!
ハクが舐めてくれたから‥い、いや、その‥手当てしてくれたから」
ハクはしばらくアカイトを見つめていたが
「それなら‥よかった」
と穏やかに微笑んだ。
アカイトはなんだか気まずくて視線を逸らす。
「あ。私が代わりに結びますから、アカイトさんは休んでいていいですよ。
後で絆創膏探しますね」
ハクはそれに全然気がつかず、アカイトの代わりに紙を結わいていく。
ハク、‥無意識にすげぇことしすぎ‥
そういう無防備なとこも、好きだけど‥と思いつつ
「あのさ、ハク」
「はい?」
「他の奴が指怪我しても、舐めたりすんなよ」
と釘を刺す。
「え?」
「消毒液って便利なのあるし、舐めときゃ治るってのは
それくらい小さいから手当ていらないってことだから。
‥俺以外に、そういうことしないでくれよ」
仄かに赤い顔でアカイトは視線を逸らしたまま、呟く。
ハクは意味が分かっていないのかきょとんとしているが、
「アカイトさんがそういうなら、そうします」
と頷いた。
そして、手を叩くと
「アイス、食べに行きましょう」
と可愛く笑った。
終
*アカイトはハクの行動にいつでもワタワタして欲しい‥。
でも、ある意味で紳士だから限界感じても手が出せないといい‥。
そんな感じで久しぶりに書きました。
ハクは無防備すぎて、アカイトが心配しまくればいいです。
で、周りはそれにニヤニヤしていればいい(良くも悪くも)
今回のアカイト、ドサクサにまぎれて「俺にだけ」発言してます。
成長したじゃん‥(ニヤニヤ)
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